■ 施工にあたって:

合板を使用せず無垢材のみを使用し、
土壁・木製建具・ステンレス造作キッチン・地場の瓦・沖縄の畳等、
お客様の強いご希望により、本物の素材にこだわった家づくりとなりました。
水道配管にはステンレス配管を取り入れています。

本物の材料で造り上げる家づくりには、それに見合う職人の腕も必要となり
家の各所で素材と職人の腕の素晴らしさが際立つ仕上がりとなっています。

 

■プランにあたって:吉村理建築設計事務所 吉村理

敷地は町全体が緩やかに南へ傾斜する見晴らしの良い素晴らしい住宅地の一角に位置します。
新しい試みとして、周辺と敷地とを塀や柵で区切る事を止め、高低差だけを境界としています。
緩やかな斜路により周辺と敷地内とをあいまいに繋いでいます。
周辺から敷地内に入り込んだ斜路は中2階のデッキテラスに接続するスロープへとつながり
道路の高低差を利用した重層的な床レベルや、内外を複雑に行き来する回遊動線とあいまって
どこにいても豊かな周辺環境と繋がり、心地よい開放感をもたらしています。
書斎や寝室、和室といった落ち着いた雰囲気を要する「留まる空間」は
東西に配されたコの字型のボリュームにそれぞれ内包し
開放性のカウンターウエイトとして機能させています。
1対になったこれらの「留まる空間」は、
外から室内に入りこんだ焼きスギ板の大きな壁面と、
他の柔らかな仕上げに対して非常に荒々しい表情を持つ大きな土壁面との
コントラストにより強調されています。
東西に設置された1対の巴瓦は、2人のお子さんが作成されたもので
「1対」というデザインはお施主さんにとっては必然だったように思います。
施主様のご希望もあって、接着剤や合板は一切利用せずに、
大きな気積の在来木造住宅を実現しています。
自然素材の木造住宅とうたっていても、現状では合板や接着剤に大きく頼っていることがありますが
こちらでは厚板の斜め張りや貫壁など、伝統工法を織り交ぜて
無垢材だけで構造上の解決を試みています。
裏方が変われば表面のデザインにも変化が生じ、
従来の木造住宅には見られない、新しい建築表現になったのではないかと思います。
また、あらゆる2次部材を30mmをモジュールとして、木組みやビス止めで組み上げており、
将来的な再利用やリノベーションにも対応しています。
施主様は以前のお住まいでも薪ストーブを利用されており、
薪ストーブは設計にあたっての最重要項目の1つでした。
冬の暖房は基本的にはストーブによる全館暖房です。
階段室下のニッチから横方向に出てきた暖気は、吹き抜けを上昇。
吹き抜けに面して設置された巨大なガラス面により、
上部で冷やされた空気が下降し、対流を生み出すしくみです。
ストーブ上部の分厚い土壁には蓄熱を期待。
夏季は深いひさしによる日射の制御と、詳細に検討された通風計画により快適な環境を生み出します。

 

  1. 南に傾斜する敷地の高低差を活かした開放感のある空間を計画
  2. 薪ストーブを設置した全館暖房
  3. 接着剤、合板をいっさい使わない在来木造住宅を実現
  4. 将来的な再利用やリノベーションにも対応できる施工

DATA

竣工:2014年11月
構造・規模/木造2階建
場所:三重県名張市

敷地面積/283.48m²
延床面積/176.28m²
設計/吉村理建築設計事務所 一級建築士事務所

2014.12.20|WORKS